マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓
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定価 : ¥ 2,625
販売元 : 株式会社共同通信社
発売日 : 1997-05 |
国防長官として判断ミスをこの年齢で認める勇気と知性は賞賛される
べきと思うが、それでも尚、この本は「ボブから見た」ベトナム戦争
と理解すべきと感じた。下で「俊」さんが書かれているように
ハルバースタムの"The best and the brightest"と共に読み、比較
検討するためにおすすめしたい。
ベトナム戦争は僕が小学生の頃だった.毎夕のニュースコープで田英夫や古谷綱正が,北爆がどうした,ベトコンがどうした,マクナマラ国防長官がどうした,としゃべっているのを見ながら夕食を食べていた.それから僕は大学生のときにハルバースタムの「The Best and Brightest」を読み,「地獄の黙示録」や「グッドモーニング,ベトナム」を見て,そして中年になってからこの本を読んだ.
まずはマクナマラの真摯な姿勢とその知性に脱帽である.彼はこの本の執筆後ベトナムを訪れ,当時の北ベトナム軍の最高幹部らと「歴史の検証」を行っており,それはNHKでも放映されたとおりである.ほぼ同じ時期にキューバ危機についてもカストロたちと「歴史の検証」の会議を行っている.現代史では,歴史の検証が,それも当事者たちによって,可能なのである!その検証を通してマクナマラは彼なりに当時を反省していく.その姿勢はアメリカ人としては稀有なことながら,キリスト教徒として絶対善の神の監視の前ではそうせざるを得なかったのだろう.
しかしながらマクナマラの反省はベトメム人に対して罪を詫びているわけではない.彼は多数の犠牲となった兵士を送り出した母国の国民と自らの神に対して詫びているのである.そこに,まだまだ現代史の総括をするには早すぎるアメリカの精神が見える.ハルバースタムの著作と合わせて読むと,さらに深く考えるきっかけとなる.
おそらく世界中で長く読み継がれていく本でしょう。本書に比肩する1冊をあげれば、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」(1962)です。著者マクナマラが米国防長官時代に作成を命令し、その後公刊された「ペンタゴンペーパーズ」でも明らかにされていなかった、米の対ベトナム政策の激しい流れが、本書によってかなり明らかにされています。またケネディもジョンソンも、マクナマラの助言をいれて、NATOの公式戦略と正反対の「核兵器の先制使用をしない方針をとった」など極めて大きな意味を持つエピソードも満載です。しかし、本書によってベトナム戦争の真相が明らかになったと考えるのは、大きな誤りです。北ベトナム政府、南ベトナム解放戦線、そして両者を公然と、演説と軍事物資とおそらくは多数の人員で支援した中国とソ連の政策を吟味しなければ、真相には決して達しないのです。これは21世紀の課題です。
この本を読む限りでは、マクナマラと言う人は国家と上司に忠実であった真面目なエリート、と見受けられますが、マクナマラはベトナムを丸で知らず、戦争の継続の責任をハノイ首脳陣に押し付けています。勝手に他人の庭に入っていったのは彼自身のアメリカだったことは認識していないようです。マクナマラの記述に惑わされることなく、この本を当時のアメリカの責任者が如何に何も理解していなかったか、と逆説的に観て読むことをお勧めします。アメリカにとってBest&Brightestであった時代、国民の多くはマクナマラ同様に間違いを知ろうともしなかった。これは人類の不幸です。
「だ」「である」調でなく「です」「ます」調で書いてあるところに、著者の自身の過去へのスタンスが感じられる。回顧録であるのでベトナム戦争以外の著者の個人史についても言及している。この所も著者の人となりや、「過ち」をもたらした原風景を汲み取れるかもしれなく興味深い。
中心となるベトナム戦争についての個所は、恐らく著者の全能力と全知識を動員して誠実に分析しているのだろう。そしてベトナム戦争は過ちであったと言う結論に達している。しかしベトナム戦争肯定派からも否定派からも時に手厳しい評価が与えられている。いわく「あれで贖罪のつもりか」いわく「事実誤認がある」と言ったものである。
しかし一個人で、且つ当事者である著者に、後世の人間が納得する答えを求める方が間違っているだろう。著者の回顧録はあくまで著者の回顧であって、主観や個人的な意地が加味されて当然である。普通の人間ならば「自分のために死んだものが浮かばれないから。」と自己批判からすら逃げるだろう。しかし例え自己批判という結論に達しようとも、歴史を冷静に見つめ、何とか教訓をつむぎ出そうと言う姿勢には感銘を受ける。
著者が決して安易に時勢におもねって自己批判をしているのではないことは、本文にある精密な考察と、なによりあの戦争で命を落とした人が納得しない結論であるというデメリットから解っていただけると思う。
あの戦争の一当事者の、一意見として、静かに耳を傾けるべき一冊である。